仕事も用事も多いのに、今日の午前中、国土地理院 関東地方測量部の旧版地図閲覧窓口に行ってきました。ちなみに、休日はお休みなので、行くなら平日しかありません。
場所は九段下。京王線から行くと都営新宿線に乗り換えてそのままです。とても便利。
実際に行ってみると、PCが並ぶ地図好きにはたまらないパラダイス。膨大な古地図や航空写真があっていくらでもタダで見られます。米軍撮影の航空写真は紙に申請を書いてCD-Rを借り受けねば見られませんが、Web公開版とは比較にならない精細さ。
更に旧版地図は申請を書いて収入印紙を貼れば、その場で謄本をもらえます。しかも、合同庁舎なので収入印紙はエレベータで4Fに降りればそこで売っているという利便性。(ただし、エレベータが6Fを境に上と下に別れているので、直通は出来ない)
和泉変電所付近の米軍撮影の航空写真のチェックと、懸案の地図を調べてきました。
収穫物 §
目当てはこれです。
- 2万5千分の1 東京西南部 76-7-1-1 大 8 鉄補 T08/09/30
ついでに念のため、これの北方も確保。
- 2万5千分の1 東京西部 76-6-2-13 大 8 鉄補 T08/10/30
更に、良い機会なのでついで、として以下の4枚も確保。
- 2万分の1 世田谷 明治42測量 大正2年製版
- 2万分の1 世田谷 明治42測量 大正2年製版 大正6年鉄道補入
- 2万分の1 中野 明治42測量 大正2年製版
- 2万分の1 中野 明治42測量 大正4年鉄道補入 大正6年改版
ちなみに、世田谷と中野の2枚ペアなのは、下高井戸が丁度境界上にあって分割されてしまうからです。鉄道補入前後を両方とももらったのは、鉄道補入という作業の比較検討のためです。
以上6枚で3000円でした。
大正8年頃、淀橋変電所から笹塚駅付近を経由して南に延びる送電線 §
さて本題です。
今昔マップ2を見ていて気付いたことがあります。
それは大正8年の地図に、淀橋変電所から笹塚駅東側を経由して南に向かう送電線が存在することです。前後の時代にはありません。もちろん、現在も残っていません。
問題は、この年代の更に南側は昭和4年二修昭和6年発行の地図になってしまい、送電線の続きが分からないことです。
しかし、この地域の大正8年の地図も国土地理院にはあることがWeb上の情報から分かっていたので、調べに行ったわけです。
結果は大当たりでした。
- この送電線はそのまま南下する
- 近くに現在の駒沢線に相当する送電線が存在するがそれらと合流することはない
- 最終的に玉電を超えて上馬付近の変電所に至って終わる
- この変電所から更に南に延びる送電線がある。これは多摩川を超えて川崎方面(?)に進む (2009/05/27追記 これは大正2(1913)年10月開通の富士瓦斯紡績東京幹線で、これを使って玉川電気鉄道へ電力を卸していたそうです。現在の都南線とほぼ同じだそうです)
- この変電所は現在のテプコ野沢ビル(環七沿い、上馬交差点のやや南東)と思われる (2009/05/27追記 ここが現在の駒沢変電所だそうです)
ここで以下の謎が残ります。
- 東京電灯の変電所である淀橋変電所から延びているにも関わらず、東京電灯の送電線網と整理統合されておらず、一部は重複経路のようになっている
- なぜ短期間だけ存在し、消えてしまったのか。あるいはすぐ消えるような明らかな重複経路がなぜ建設されたのか
考察 §
明確なことは分かりませんが、京王電気軌道が東京電灯と玉電の双方から受電していたという歴史的な経緯をふまえると、この送電線経路は淀橋変電所と上馬の変電所を結ぶ経路ではなく、京王電気軌道に対して東京電灯から給電する経路と、玉電から給電する経路の複合体であると解釈するとすっきり理解できるような気がします。
つまり、上馬の変電所とは玉電の路線から遠くない位置にあることも踏まえ、玉電の変電所であったと解釈するわけです。そうすると、東京電灯と重複するような送電線経路を持つこと理由が解釈できます。それらは別会社の施設なのです。(2009/05/27追記。これは富士瓦斯紡績の東京の拠点変電所だったそうです)
とはいえ、より具体的かつ明確に状況が分かる「何か」を機会があればもっと追求してみたいと思います。
感想 §
やはり地図は楽しいぞ!
2009/05/27追記 §
サルマルヒデキさんにご教示いただきましたが、玉電経由で受電した電力に関しては、どうやら富士瓦斯紡績→玉川電気鉄道→京王という順番で電力が卸売りされていたようです。漠然と、玉電が発電所を持っていたのかと思っていましたが、京王に来た電力はそれとは別のようです。詳しくは下北沢X物語(783)~鉄塔駒沢線千鳥足紀行(10)~ を参照。
ちなみに、「玉電が走った街 今昔」は所有していて、数日前に開いて見たばかりです。その時に、この記述に気付かなかったのはとても間抜けな話です。とほほ……。